スターアライアンス世界一周航空券を使って、1年間に25カ国訪問した経験をもとにしたフィクション旅行記です。30年以上続けた編集者の仕事を終え、最初の宿泊地として選んだのは、マレーシアのマラッカ。クアラルンプール国際空港からバスで2時間ほどで行ける観光都市です。
仕事を終え、世界一周の旅に出ます。

「なぜ仕事を辞めるの?」と聞かれたら「世界一周旅行をするため」と答え、「なぜ世界一周をするの?」と聞かれたら「仕事を辞めるため」と答えてきました。
世界一周をするために仕事を辞めたのか?
仕事を辞めるために世界一周を言い訳にしたのか?
どっちが本当なのか今のところ自分でもわかりませんが、とりあえず最初の宿泊地として、マレーシアのマラッカに来ています。あの“マラッカ海峡”のマラッカで、街全体が世界遺産に登録されている海沿いの街になります。
作家の沢木耕太郎さんが、『深夜特急』のなかで、「夕日を見るために来た」と言っていた街です。まだ半日しかいませんが、不思議な場所でした。
1396年にマラッカ王国ができて以来、ポルトガル、オランダ、イギリス、日本など次々と他国に支配され、いろいろあって現在、マレーシアの最古の都として観光都市となったそうです。
いろいろあった街なので、その結果、(住民にとっては)良かったのか悪かったのかわかりませんが、さまざまな文化が入り混じって、不思議な場所に仕上がったんじゃないかと思います。
お得に世界一周できる航空券について。

東京の羽田空港からマレーシアのクアラルンプールまで、ANAのエコノミークラスに乗って移動しました。
スターアライアンス世界一周航空券を使って20都市以上を巡る旅の最初のフライトです。
「世界一周するよ」と言うと多くの人が、「え、船で?」と返してきました。世界一周=豪華客船でのクルーズ、みたいな印象があるみたいですね。
「いえいえ、そんなお金はありませんよ、飛行機で。世界一周航空券を使うんです」と言うと、「そんな航空券があるんですね」と驚かれます。
僕が今回使ったスターアライアンス世界一周航空券は、地球をぐるっと16回のフライトで約58万円(エコノミークラス利用。燃油サーチャージ等込み)。ビジネスクラスでも90万円弱。
普通にロンドン往復で30万円弱(JAL 、ANAなどフルサービスキャリア利用)かかりますから、これはこれでめちゃくちゃお得ですよね。
僕はエコノミークラスを選択してしまいましたが、もう一度世界一周にチャレンジするとしたら、多少高くてもビジネスクラスを“絶対”選択すると思います。
理由は、16回のエコノミークラス利用は結構しんどいからです。差額32万円、ひと区間2万円の課金で済むなら、ビジネスクラス利用の方が絶対おすすめです。
世界一周航空券はリーズナブルな一面、買い方、予約方法などかなり癖が強く、進めていくと面倒なことがいくつも生じます。そのあたりいろいろ伝えたいことがありますが、今回はこのまま進めます。
マラッカのバスターミナルで早速、困る。

今回の世界一周で訪れる最初の国としてマレーシアを選んだのは、刺激の少ない国から始めたかったからです。
激務を30年続けていて、相当疲れが溜まっていたこともあり、最初から行ったことのない国に行くのは避けたかったんですね。マレーシアは過去に3度ほど訪れた経験があり、食べ物がおいしかった記憶もあったので、1か国目としてふさわしい国のように感じました。
とはいえ今のクアラルンプールは都会すぎるので、1泊目はちょっと離れた地方にしてみようと思い、クアラルンプール国際空港から直接バスで行けるというマラッカを目指したのです。
マラッカへはクアラルンプール国際空港から直接バスに乗って2時間弱で行けます。広大なクアラルンプールの空港の中でマラッカ行きのバス停を見つけるのに多少苦労しましたが、マラッカのバスターミナルまでは簡単でした。
でもここからが難しい。
海外旅行してると、「いや、それはないでしょ」とか「あ!やばい、詰んだ」という状況が突然訪れたりしますよね。それが早速来てしまいました。
マラッカのバスターミナルは長距離と市内の両方を兼ね備えている大きなターミナルです。市内へのバスが何路線も走ってます。GoogleMapもバスを勧めてくれてるし運賃も安いので、市内バスをトライしてみようと市内バスのターミナルに移動してみると、バスがいません。
ターミナルは立派で、20本近くプラットフォームがあるのですが、稼働してるのかどうかわからないレベルでお客さんもバスもいません。はるか遠くのバス待機所にGoogleMapが教えてくれた14番のバスが見えたので、駆け寄って運転手に尋ねたら「あんたが乗るのはこれじゃない。19番に行け」と。で、ぐるっと回って19番のターミナルに行ってもバスも人もいません。
気温は40度近く。ターミナル内はエアコンも効いてません。

チケットカウンターとかインフォメーションセンターがないので問い合わせできそうな人もおらず、気温は40度近く。エアコンが効いている場所はありません。
バスは諦めて配車アプリのGrabで車を呼ぼうかと思ったんですが、今度はどこに呼んでいいのかわかりません。バスターミナルには車は入れないし、タクシー乗り場には「Grabお断り」の張り紙です。
余談になりますが、UberやGrabなどの配車アプリは、海外旅行をする上でとんでもなくありがたいサービスです。多くの国のタクシーはメーターがまともに機能していなくて、乗るたびに運転手と料金の駆け引きをする必要があります。ぼったくってくる運転手も少なくありません。行き先を正しく伝えるのもなかなか難しいものです。
その辺りを、ざばっと解決してくれたのが配車アプリになります。
ただ、空港や駅、バスターミナルなど、元々のタクシーの稼ぎ場所では、多くの都市で利権の争いがあり、配車アプリで呼んだ車が近くまで入れない場合があります。
今回、マラッカのバスターミナルもそうでした。広大な敷地を歩き回ったんですが、外部から簡単に車が入れるスペースがないんですよね。
敷地外に出ても車がビュンビュン通る幹線道路に面していて、Grabを待つようなスペースはなかったです。
1時間ほど周囲をぐるぐるして、「やっぱバスでトライするか」と14番のプラットフォーム付近に戻ると、アメリカ人ぽいバックパッカーに、「市内に行きたいんだけど、バスがない。どうしたらいいか知ってる?」みたいに聞かれました。
ちょうどそこに14番のバスが入ってきて、「運転手に聞いてみましょう」と二人で運転席に駆け寄ると、「いやだからさっきも言った通り、あんたらが乗るのは19番だって」「19番いないし…」みたいなやり取りの末、「まあ、とりあえず乗れや。途中でいいところで降ろしてやる。オンリー1RM(30円)」ということになり、それを遠巻きに眺めていた他の人も追従して、そのバスに乗ることになりました。みんな困ってたんですね。
結局、2時間近くかかって宿までたどり着きました。それはそれでRPGゲームを解いていくようで楽しいのですが、40度近くの気温でやるべきではないです。
ここでの最適解は「Grabをとりあえず呼んでみて、待ち合わせ場所については運転手の指示を待つ」かと今は思います。